2026年08月26日

楽天「AI店長」で運営代行はいらなくなる?ー 正直に考えてみた

楽天市場に「AI店長」が実装されると聞いたとき、真っ先に頭をよぎったのは
「自分たちのような運営代行は、いずれ必要とされなくなるのではないか」という不安でした。

24時間365日、店舗の知識を反映して接客までしてくれるAIが登場するなら、
運営代行が担ってきた役割の一部は、確かに置き換わっていくかもしれません。

それでも10年間、楽天・Yahoo!の運営を見てきた立場としてこの構想を冷静に見たときに
「それでも必要とされる部分がある」と考えています。

この記事では発表内容を正直に整理したうえで
今からやるべきこと、頼りすぎると危険なこと、
そして運営代行としての率直な考えをお伝えします。

1.「AI店長」とは何か

1.「AI店長」とは何か

2026年8月5日、パシフィコ横浜で開催された
「Rakuten AI Optimism」の基調講演で、
三木谷浩史社長が「AI店長」の開発を発表しました。

店舗の店長やスタッフの知識・接客スタイルを反映したAIアバターが
24時間365日、商品相談から購入支援までを担う構想です。

デモではAI店長「イチコ」がスキンケア商品を探す利用者に
肌質や好みに応じた商品を提案し、口コミを紹介して注文を完了する流れが披露されました。

三木谷社長は
「インターネットショッピングは自動販売機ではない」という考えを示し、
楽天市場の「人による接客」という強みをAIで拡張する位置づけだと説明しています。

2.わかっていること・まだ発表されていないこと

新しい構想ほど断定的な情報が独り歩きしがちです。
2026年8月時点で確認できることと、
まだ発表されていないことを分けて整理します。

2-1.わかっていること

■開発中でデモが公開されている
■2026年内のローンチを予定(楽天グループ2026年度第2四半期決算説明資料に記載)
■商品相談への応答、商品の比較、レビュー紹介、おすすめ提案、注文手続きの支援を行う
■24時間365日対応
■店長やスタッフの知識・接客スタイル、店舗の特徴、商品の特性を反映する

2-2.まだ発表されていないこと

■正式な提供開始日、料金、対象店舗の条件
■店長やスタッフの知識をどう登録・学習させるのか
■AI店長が何を参照するのか(商品説明・FAQ・レビュー・画像の代替テキストなど)
■回答の管理機能(禁止事項の設定、回答停止、人への引き継ぎなど)
■表示される場所、使用するAIモデル

特に「何をどう参照するのか」が未発表である以上、
「これをやれば必ずAI店長に有利になる」
と断言できる段階ではありません。

この記事もそこは断定しません。

3.今からやるべきこと

三木谷社長は講演後のセッションで出店者から
「AI店長の実装に向けて今から取り組むべきこと」を問われ、
「何でその商品を買うべきかのうんちくや商品説明が重要になる」
と答えたと報じられています。

3-1.商品説明を「判断材料」に書き直す

「大人気の高保湿化粧水です」ではなく、
「保湿成分を高配合しているため、洗顔後すぐに乾燥を感じる方に向きます」というように、
誰に向くか・なぜかが分かる形に書き直すことが方向性として示されています。

3-2.数字は体感できる言葉に置き換える

判断材料にする際、数字をそのまま並べるだけでは伝わりません。
「●g」と書くより
「スマホより軽い」
「レモン1個分の軽さ」
といった、日常で体感できるものに置き換えた方が伝わります。

さらに
「これだけ軽いと毎日持っても疲れない」というように
数字の先にある生活のメリットまで書くことが重要です。

3-3.使った人のリアルな声とエピソードを残す

ありきたりな商品情報だけではAIが読んでも人が読んでも刺さりません。
実際にその商品を使ってみた人のリアルな感想や
商品が生まれた背景のエピソードこそが他の商品と差がつく情報になります。

4.この機能だけに頼ると危険なこと

準備を進める価値はある一方で、注意すべき点もあります。

4-1.「向かない人」を書くだけでは離脱を招く

商品説明に「向かない人」を明記すること自体は判断材料として有効ですが、
それだけで終えると該当したユーザーはそのままページを離脱してしまいます。

「向かない人にはこちらがおすすめ」と、
代替商品への導線やバナーをあわせて設置することで、
離脱を防ぎながら判断材料としての誠実さも保てます。

4-2.AI任せの文章をそのまま出さない

生成AIの出力は商品固有の仕様や効果の正確性を保証しません。
それらしい成分名や効果が混じることもあるため、
最終的な確認は必ず人の目で行う必要があります。

誇大表現や根拠のない最上級表現は景品表示法や薬機法に触れる可能性もあります。

4-3.仕様が固まる前に全力投球しすぎない

学習方法や参照範囲が未発表の段階で特定のやり方に全リソースを投入するのはリスクがあります。
仕様が発表された時点で、想定と違っていた場合の見直しコストも考慮しておく必要があります。

5.それでも運営代行が必要だと考える理由

ここまで整理した上で、率直に思うことをお伝えします。

5-1.「何を書くか」を引き出すプロセスこそが実務

商品説明を判断材料に変えることは言うほど簡単ではありません。

実際の運営代行の現場では
「うちの商品の強みって何ですか?」と店舗様に聞いてもすぐには言葉にならないケースが少なくありません。

AIが接客の「器」を用意しても、そこに入れる中身、
つまり実際に使った人のリアルな声や商品が生まれた背景を引き出し、
言葉にしていくプロセスには、外部の目線が必要だと感じています。

5-2.日々変化する仕様への追従

運営代行を検討される店舗様の多くは、
人員リソース不足という課題を抱えています。

その中で、モールの機能が日々進化していく状況に、
常にアンテナを張り続けるのは簡単ではありません。

EC業界のトレンドに敏感に反応し、
迅速に対応できる立場がいることで、
変化に取り残されずに済むという価値は、
AIが接客を担うようになっても変わらないと考えています。

5-3.複数店舗を横断して見える、モールごとの実務的な違い

5-3.複数店舗を横断して見える、モールごとの実務的な違い

メーカー型番商品を扱う店舗では競合の動向が売上を大きく左右します。

例えば同じ価格で販売していても、
競合がポイント5倍・自店が2倍では、その差がそのまま購入率に影響します。

ここで見落とされがちなのが、楽天とYahoo!でポイント設定の柔軟性が異なるという点です。

楽天では一度設定したポイント倍率は設定期間中の変更ができず、期間終了を待つ必要があります。
一方Yahoo!はポイント設定をすぐに変更できるため、
5のつく日や日曜日といった「得日」に合わせて競合をリサーチし、
その動向次第で一時的にポイントを引き上げて優位に立つ、といった機動的な対応が可能です。

これは楽天・Yahoo!の両方を運営している会社でも意外と把握されていないポイントです。

こうした複数店舗・複数モールを横断して見えてくる実務的な知見は、
AIが接客を担うようになっても、店舗の戦略を組み立てる部分では引き続き必要とされると考えています。

6.まとめ

この記事の重要なポイントを3つに整理します。

■「AI店長」は2026年内のローンチが予定されているが、
料金・参照範囲・学習方法など多くの部分が未発表であり、断定的な準備はまだできない

■今からできる準備は商品説明を「判断材料」に書き直すこと。
数字は体感できる言葉に、ありきたりな情報はリアルな声やエピソードに置き換えることが有効

■AIが接客の「器」を用意しても、そこに入れる中身を引き出すプロセスや、日々変化するモール仕様への追従、
複数店舗・複数モールを横断した実務知見は、引き続き運営代行が担える価値だと考えている

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